うなぎのいま 〜加速する研究と解明〜

食べると美味しいうなぎですが、その生態については意外と知られていません。
実はうなぎは、様々なことが謎のまま解明されていなかった不思議な生き物なのです。

世界には19種類のウナギがいますがそのうち食用になるのは4種類ほど。昔から日本で食べられてきたニホンウナギをはじめ、ニホンウナギに形や味が似た品種ヨーロッパウナギ、フィリピンやインドネシア由来のビカーラ種などです。国産うなぎと明記せず「うなぎ」とだけ表記され販売されている低価格のものは、海外で養殖されたビカーラ種である可能性が高いと考えられます。
品種の違いは、そのまま味の違いとなります。おなじマグロの名がつく魚でも、本マグロとキハダマグロ、バチマグロ、ビンチョウマグロでは味が大きく異なります。同様にニホンウナギとそれ以外のうなぎでは、見た目が似ていても味が大きく異なります。万葉集にも詠まれ、昔から日本人に愛され親しまれてきた「うなぎ」はニホンウナギであり、日本人がうなぎに求める美味しさは、まさにニホンウナギのそれだといえます。

そのニホンウナギの生態については、長い間いろいろなことが不明なままでした。
判明していなかったことのひとつにウナギの産卵場が何処かというものがあります。海を回遊して産卵していることは分かっていましたが、産卵前の卵を抱えた親うなぎや、稚魚になる前の卵の状態が発見されることがなく、産卵場が特定できませんでした。ウナギの産卵場調査がはじまったのは1930年代からですが、70年以上に渡り謎は解明されずにきました。日本の塚本勝巳(つかもと・かつみ)教授率いる研究船・白鳳丸が、マリアナ海溝沖で世界で初めて親うなぎの捕獲に成功したのは2008年6月、卵の発見に成功したのは翌2009年です。いずれも最近の出来事ですが、この発見によりニホンウナギの産卵場が特定されることになりました。

産卵以外の生態についても、徐々に明らかになってきたことがあります。その一つがうなぎの回遊・生息範囲です。うなぎの起源は約1億年ほど遡ることができ、最古のうなぎはボルネンシスという深海魚の祖先で、現在のインドネシアのボルネオ島付近に現れたと考えられています。川や湖に住んでいるイメージの強いうなぎですが、海と川を往き来し海で産卵する「降河回遊魚」です。ところが、全てのうなぎが、淡水、汽水、海水と住処を変えるわけではないことが判明してきました。日本国内のニホンウナギを調査したところ、河川に遡上せず、一生海で過ごす「海ウナギ」が多数いることが判明しています。それはうなぎの「耳石」を分析することで発見されました。耳石というのは内耳にある炭酸カルシウムの結晶で、その断面には木の年輪のように同心円状の輪紋構造がみられます。この耳石には、分析したうなぎ個体がどこで活動・生息してきたかが細かく記録されているのです。日本国内のある調査・研究では、海のみで生息するウナギが40%、河口(汽水)に棲むうなぎが44%、川を遡る「川ウナギ」は16%しかいないという結果となりました。

このようにニホンウナギに関する研究は急速に進んでいます。人工で育てた親が産んだ卵をふ化させ、幼生からシラスウナギにそして成魚まで育てる完全養殖についても、少し前までは不可能と言われてきましたが、2010年に「水産研究・教育機構」が世界で初めて成功しています。ニホンウナギに関する研究や完全養殖の技術が発展することは、美味しいうなぎのより安定した供給に繋がると考えられます。

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